八戸ツカハラミュージアムに展示された謎の1928年ダッジ、その正体を外観から本気で推理してみた


1. モデル名が書かれていないクラシックカーとの出会い

1.1 展示カードから分かる最低限の情報

八戸ツカハラミュージアムを訪れた際、一台のクラシックカーが目に入りました。
落ち着いた佇まいと重厚な存在感を放つその車両の展示カードには、次のような情報だけが記されていました。

  • メーカー:DODGE(ダッジ)

  • 年式:1928年

  • 製造国:アメリカ

しかし、肝心のモデル名が書かれていません。クラシックカー展示では比較的珍しいケースです。一般的には車種や型式まで記載されていることが多いため、「なぜモデル名がないのだろう?」という疑問が生まれました。

1.2 なぜこの車が気になったのか

クラシックカーの魅力の一つは、細部から時代や設計思想が読み取れることです。
つまり、モデル名がなくても外観からある程度推理できる可能性があります。

そこで今回は、

展示情報が限られているこの車両の正体を、外観観察と歴史的背景から推理してみる

というアプローチを取ってみました。


2. 外観観察から始める車両分析

2.1 フロントグリルが語る年代のヒント

まず注目したのはフロントグリルです。

観察できる特徴は次の通りです。

  • 縦長のラジエーター形状

  • 上部が緩やかなアーチ状

  • 装飾が比較的シンプル

1920年代後半のアメリカ車は、このような縦型ラジエーターが主流でした。特に1927〜1928年頃のダッジに多く見られるデザインです。

この時点で、展示カードの「1928年」という情報は外観的にも矛盾がないと考えられます。


2.2 フェンダー形状から見る時代性

フェンダー(タイヤ上部のカバー)も重要なヒントになります。

  • 丸みはあるが流線型ではない

  • 板金的でやや直線的な造形

1920年代中盤以前はもっと平板な形状が多く、1930年代になると流線型が進みます。今回の車両はその中間的なデザインであり、やはり1920年代後半の特徴に一致します。


2.3 ヘッドライト配置が示す設計思想

ヘッドライトはラジエーターの左右に独立して配置されています。
フェンダー上ではなく、前面に近い位置です。

これは当時のダッジ車に典型的なレイアウトで、1929年以降のデザインとはやや異なります。


2.4 六芒星エンブレムという決定的手がかり

ラジエーター中央には六芒星(ダビデの星)型のエンブレムが確認できます。

これは「Dodge Brothers」時代の象徴的なマークであり、1920年代後半のモデルに広く使用されていました。

この要素は年代推定において非常に強い根拠となります。


3. 1928年のダッジという時代背景

3.1 Dodge BrothersからChryslerへの移行期

1928年はダッジにとって重要な転換期です。
Dodge Brothers社はこの時期、クライスラーの傘下に入り、新しい方向性へと進み始めていました。

そのため、

  • 伝統的な設計思想

  • 新しいモデル体系

が混在する過渡期でもあります。


3.2 1920年代末期のアメリカ車デザイン

この時代の特徴として、

  • 車高が高い(未舗装路対応)

  • 独立フェンダー

  • 機能性重視の外観

が挙げられます。

今回の車両もこれらの特徴を備えており、時代背景と一致します。


4. 候補モデルの洗い出し

1928年前後のダッジの主要モデルを整理すると、次の候補が浮かびます。

  • Fast Four

  • Senior Six

  • Victory Six


4.1 Fast Fourという可能性

Fast Fourは比較的小型のモデルです。

しかし今回の車両は、

  • 車体サイズが大きい

  • フロントの存在感が強い

といった特徴があり、小型モデルとは印象が異なります。


4.2 Senior Sixの可能性

Senior Sixはより高級志向のモデルです。

ただし、

  • 装飾が控えめ

  • バンパーがシンプル

などから、やや豪華さが不足している印象があります。


4.3 Victory Sixという有力候補

Victory Sixは中級〜上級クラスのモデルで、

  • 堂々としたサイズ

  • 実用性と高級感のバランス

が特徴です。

外観の一致度は非常に高く感じられます。


5. 消去法によるモデル推理

5.1 なぜFast Fourではないのか

  • 車体サイズが明らかに大きい

  • 存在感が上位モデル寄り

以上からFast Fourの可能性は低いと考えられます。


5.2 Senior Sixとの違いを検証する

Senior Sixであれば、

  • より豪華なトリム

  • クローム装飾の多用

が期待されますが、それらは強く確認できません。


5.3 Victory Sixが最も一致する理由

  • 車格のバランス

  • シンプルだが重厚なデザイン

  • 六芒星エンブレムとの年代一致

これらが総合的に合致します。


6. 細部検証による最終判断

6.1 バンパー構造から見えるグレード推定

バンパーはシンプルな棒状で、装飾は控えめです。

これは、

  • 高級すぎない

  • しかし廉価モデルでもない

という中級グレードの特徴を示している可能性があります。


6.2 各観察結果の総合評価

ここまでの観察をまとめると:

  • 年代:1927〜1928年に一致

  • ブランド象徴:六芒星エンブレム

  • サイズ感:中〜上級車

  • 装飾レベル:中級

という結論に至ります。


7. 最終推定と考察のまとめ

7.1 1928 Dodge Brothers Victory Six説

以上の分析から、最も可能性が高いのは

1928 Dodge Brothers Victory Six(4ドアセダン系)

という仮説です。


7.2 なぜ完全な断定が難しいのか

クラシックカーの世界では、

  • 部品交換

  • レストア

  • 年代混在

などが珍しくありません。

そのため外観だけで完全断定するのは難しい場合があります。


8. 名もなきクラシックカーを推理する面白さ

モデル名が分からないという状況は、一見すると情報不足のように感じます。しかし逆に言えば、それは観察と推理の余地があるということでもあります。

フロントグリルの形状、フェンダーの曲線、エンブレムの意味。そうした細部を積み重ねていくことで、ただの展示物が一気に「歴史を語る存在」へと変わります。

今回の推理が完全な正解かどうかは分かりません。それでも、名もなきクラシックカーの正体を追いかける過程こそが、旧車の魅力の一つなのではないでしょうか。


類似投稿