キングダムの評価・考察・紹介


キングダム最近初めてキングダムを読みました。話題になっているので、友人から読んでみろとすすめられていました。しかし、長らく手が付かずにいました。友人は歴史好きの私におススメしてくれていたのですが、読んでみて大正解です。手塚賞をとるくらいのマンガですから面白い。

時代は秦の始皇帝が中華統一を進める、紀元前250年くらいが話の舞台です。長らく中華諸国の盟主に君臨していた周王朝が衰退し、春秋戦国時代と呼ばれる乱世の時代が500年続きました。その時代には多くの名君、名将が生まれ、様々な国が興亡し、また多くの故事成語が誕生しました。

そんな時代を終わらせるのが秦の始皇帝です。若き始皇帝も主人公の一人ですが、もう一人は戦争孤児の少年、信です。この物語は将軍というものを目指す物語になっています。現代では将軍という身分はあまりなじみがありません。しかし、古代の戦争では、現場を束ねる将軍という身分は、大きな存在でした。国の将軍とは、その国家の武を象徴するものなのです。

戦乱の時代にあって、軍団を率いる将軍は国家の命運をかけて戦います。兵士を率いて戦場を駆け回る姿は、まさに戦国時代を象徴し、また戦国時代に最も脚光を浴びる存在だったのでしょう。そんな将軍を目指す少年信の成長と出世の物語です。軍師や君主に視点を当てた作品は多いですが、将軍という身分がテーマになった作品は稀なのではないでしょうか。

春秋戦国時代に焦点を当てたマンガはやはり珍しく、始皇帝の時代を取り扱った着眼点はいいですね。特に白起、廉頗、楽毅などの春秋時代の名将が物語に出てきて面白いですね。それに、王翦や蒙恬など秦の名将が描かれていて歴史ファンには垂涎の作品になっています。

主人公は後の李信だそうです。李信は正直、横山光輝の史記でしか知りませんが、後に歴史の中でどのように描かれていくのか楽しみですね。この時代のことは、司馬遷の史記でしか知ることができません。しかし、司馬遷の史記では感じることができない物語がここにあります。

李信という人物を史記などでみると、王翦の引き立て役というポストでしかありません。あえてこの人物に焦点を当て、かく面白く描くスタンスに拍手を送りたい。上手く伝説時代をマンガの中で描く、秀作だと思います。史記では記されない歴史を上手く補完していて面白いです。

このキングダムという作品のある種の面白味は、本編の中でとある人物が台詞として代弁しています。

「周王朝が衰退して五百年 古くは斉の管仲から近い所で四君 燕の楽毅が地を揺るがし 白起・王騎ら秦六将に 廉頗将軍らの趙三大天 この戦乱の世には常に傑物が現れ彼らがその時代を回してゆく そして今 かつての大牙が砕け 無名の者たち作り上げられる―」

そして「新たな時代が幕をあけようとしているのだ」と続きます。

この壮大な歴史ロマンこそキングダムを面白くさせているポイントなのではないでしょうか。

ところで、この私的名言を話した人物…趙の武将、魏加(ぎか)という人物。いったい誰?というかあっさり討死しました。李牧の副将として登場しましたが、今となっては覚えている方も少ないでしょう。

中華十弓(なにそれ?)の一人らしく、趙三大天(本当にそう呼ばれてたの?)李牧の登場と同じくして作中に出現。歴史を俯瞰するような大言を吐いておきながら、あっさり退場。趙壮といい魏加といい、趙の武将は味があっていいですね。余談ですが、秦六将とか本当に呼ばれてたのでしょうか?白起は知っていても秦六将という名称はキングダムで初めて知りました。

以降、キングダムは魏加の言葉が、キングダムを”より面白いマンガ”への方向性を決定づけたといっていいかもしれません。このマンガは壮大な歴史ドラマだと示した人物です。