軍靴のバルツァーの評価・考察・紹介


軍靴のバルツァー軍事漫画がないご時世、なかなか珍しい作品だと思います。最初この作品を読んだ時、この時代、結構な異色なマンガだと感じました。SFでもなく、近代戦争の初期を描いた作品はあまりありません。そういった意味では、なかなか期待したい作品です。

マスケット銃が一線を退き、後部装填式ライフルが戦場で猛威を振るい始めた時代。鉄道が戦場と国家を身近に結びつけた時代。電信が国家の外交と戦争を速度をもたらした時代。つまり、ナポレオン戦争以降のヨーロッパが”モデル”になっている仮想戦記です。

プロイセンが統一戦争を推し進めた時代がモデルになっています。

横隊戦列歩兵は不要になり、散兵に戦術の基本が移り変わります。大砲が戦場で大活躍し、騎兵は科学技術によって駆逐されて行きます。つまり、戦争が王侯諸侯のものから近代の戦争に変わった時代なのです。こうして近代の戦争が始まるのですね。

あまり、軍事的な話はしないでおきましょう・・・

主人公は国家のエリート士官。任務のために、隣国の小国に軍事顧問として赴任します。赴任した小国は近代軍を持たない君主制の前近代国家です。そこの少年士官育成学校の講師になります。そこで少年たちを兵士に育て上げることになります。政治の軋轢にもまれ、王族の権力争いに巻き込まれながら、小国の軍事指導を行っていきます。

近代戦争の概念を知るための、”さわり”のマンガとしてはいいかもしれません。個人的には、史実とリンクさせて、モルトケやケーニヒスグレーツの戦いを描いてほしかったです。軍事要素が50%、独自のストーリーが30%、少年少女たちとのふれあいが20%といった構成でしょうか。

専門的に19世紀末の戦争を描いた作品ではありませんが、当時の空気や時代の移り変わりを知るには、いい作品かもしれません。しかし、”この時代”のファンとしては、ここまで書く気があったのなら、本当に普仏・普墺戦争を書いてほしかった・・・。