沈黙の艦隊の評価・考察・紹介


沈黙の艦隊かわぐちかいじさんの名作、沈黙の艦隊です。安全保障問題のマンガ版バイブルとして今でも十分読む価値のある作品です。

モデルは平成初期の日本。米ソ冷戦の真っただ中にある、複雑な世界を書ききった政治マンガでもあります。アメリカと日本の極秘協定によって建造された原子力潜水艦、コードネーム”シーバット”。海上自衛隊の士官、海江田四郎はその潜水艦を強奪。やまとと命名し、潜水艦一隻の独立国家を宣言します。

アメリカ太平洋艦隊やソ連太平洋艦隊との戦闘に巻き込まれながら、神技のごとき操艦と指揮で難局を乗り切ります。米軍のイージス艦やソ連の最新鋭潜水艦と激戦を繰り広げます。

潜水艦一隻が保持する戦闘力。もしそれが核を保持していたとするならば、国家間の戦争においてどれほどの脅威かを再認識させてくれる作品です。

半世紀、冷戦という世界構造を支えた原子力潜水艦。その兵器に焦点を当てた大作です。含まれる問題は安全保障問題だけではなく、政治や経済に及びます。世界規模に及んだマンガとしては非常に稀有な作品と言えるでしょう。

列強と呼ばれた国々の思惑、国連の意味とは?様々な問題を考えさせられます。沈黙の艦隊の作中で提起された問題は、今でも解決されていない世界にとって重要な問題です。国連や国連安保理の意味が問われる今であるからこそ必読のマンガです。

アメリカの大統領や日本の総理大臣が非常に魅力的に描かれています。各国の代表者は、自分の達の脳裏に世界と自分の国家の絵をしっかり持っています。今の日本や世界に、このような明確なビジョンを持っている政治家はいるのでしょうか?

冷戦時代は、政治・外交が今よりもっと難しい時代だったでしょうから、世界の指導者はやはり相応の世界観を持っていたのかもしれませんね。作品は1990年代の初頭に発売されています。カンボジアへの派遣、湾岸戦争など揺れる戦後の日本の安保体制の不安の核心を見事に描いた作品ですね。

自民党や共産党などをモデルとした政党が、国家の行く末を真剣に協議する姿に、本物の政治家もこんなのだったらなあ・・・と願ってしまいます。漫画の中で、選挙の政局を描いた珍しい作品でもあります。作品の中で実際の政治局面を描いた作品は、他にもあるのでしょうか?

ちなみに、鏡水会という保守政党の党首大滝さんですが、モデルはどうやらあの小泉純一郎さんだという説があります。本当でしょうか?